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武士道 World

こちら薄桜鬼の二次創作をやってまーす!(夢小説) オリジナル主人公で土方落ちか、斉藤落ちか、風間落ちか、山崎落ちを 目指してます。 まだまだ最初のほうですがよかったら読んでみてください。

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序章 

何もかもが、赤で染まった。

パチパチと炎は燃え、あたしの両手には血で濡れた刀。

隣では人形のように動かなくなった両親の姿。

何故か、涙は出ない。

いつから、枯れてしまったのだろう。


炎から逃れ、追ってから逃れ、そんな時あたしの目の前に差し出された暖かい

手は、触れることもなく冷たく、かたくなった。

一人だけ逃げてきた。たった一人でなんとか生きてきた。

盗み、殺し、何でもやった。

お金のために、暗殺までにも手を貸してしまった。

もう、人ではなくなってしまったかのような感覚がまとわりついた。

そこへ、優しく声を掛けてくれた夫婦がいた。

耐えきれなくなって、縋り付くようについて行ってしまった。

捨てられるとわかっていたのに・・・・・・・・
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*CommentList

1章 彼らとの出会い(1)

「さぁ、みんな早くして!!今日はお祭りよっ!!」
市瀬爽は京都の新選組屯所前で笑顔をふりまいていた。
後に続いて幹部がゾロゾロと出てくる。
「ちょっとまてよ~・・・。いち姉さん!!」
爽の弟分である8番組組長 藤堂平助があせって追いかける。
「ほらほら!遅い遅い!」
無邪気に笑いながら平助をからかい、追いかけっこをしている姿は子どものようで、あの鬼の副長 土方歳三も小さな笑みを浮かべた。
10番組組長 原田左之助は穏やかな顔をして、見守った。
「まったく・・・。あいつらはまだ子どもだな。」
その言葉に同意するように2番組組長 永倉新八と3番組組長 斉藤一がつぶやく。
「まぁ・・いいんじゃねぇの。」
「屯所ではもう少し静かにして欲しいものだがな・・・。」
一のつぶやきに、1番組組長 沖田総司は苦笑いをした。
「一君・・・今日も真面目だね。今日ぐらいはじけたら?お祭りなんだしさ。」
一は無視をしてそのまま歩き始めた。
「沖田君おやめなさい。どんなことをしても斉藤君の真面目さは治りません。
はじけたところで、こちらがゾッとするだけですよ。」
優しい笑顔では言うものの、その中には少し辛いものがあった。
その言葉の持ち主は総長 山南敬助だ。
総司はあきれながらも何となく笑う。屯所の門の前では、局長 近藤勇が
見送っている。
「皆、市瀬君のことを頼んだぞ。ゆっくり楽しんでくると良い!」
勇はそう言うが、幹部にも務めというものがある。
歳三は腕を組んで眉間にしわを寄せた。
「おい!総司と新八は見回りわすれんじゃねぇぞ。」
(ったく。・・・・・そういやぁ、久しぶりだな。こうやって、むかしみてぇに祭りに
行くなんてのは。・・・爽がきてからか。穏やかな空気が流れるようになったのは。)ー・・・




あれは、徳川家茂公の警護で山南さんと大坂に行ったときだったか。
ある呉服問屋に不逞浪士が押し入り、俺たちは急いで駆けつけた。
突然目に入ったのは、呉服問屋の主人とその妻。そして、その二人を守るようにして前に立ち、勇敢にも刀を構えた女子の姿だった。
俺がボーっとしている内に浪士が俺に斬りかかってきた。
山南さんはそれに気づいて命がけで俺を守った。
だが、山南さんは、左肩を深く切られ、その場に倒れる。
その光景に、女子の目つきが変わって、とうとう浪士に斬りかかった。
それはもう、あり得ないほど速い刀さばきで、俺は自分の目を疑った。
俺は、山南さんを主人にまかせて刀を抜く。
ただ、ただ、悔しくて、自分自身が許せなくて、力任せに刀を振るった。
今思うと、情けねぇ。
女子と二人で浪士を全員斬った。そいつは、息切れをしている様子もなく、
刀を冷静に納めた。その時の顔は、酷く悲しいもので、しかし、血を浴び、静かに立ち尽くす姿は恐ろしくも美しかった。
女子の顔は一瞬のうちにあわてたものへと変わり、大声を上げた。
「父さん!!その人を奥へ!!あなたも手伝って!!!」
主人とその妻は怯え、震えていたが、とにかくと山南さんを運んだ。
女子は止血し、応急処置をとり、そのうちに主人は医者を呼びに出た。

山南さんが落ち着いて目を覚ましたときだ。
女子は駆け寄った。
「大丈夫?目が覚めて良かった・・・。」
「あなたは・・・確か呉服問屋の娘さん・・・。っ!土方君は!!?」
「大丈夫だ。あんたに守ってもらったからな。・・・・すまねぇ。」
山南さんはそのとき、ーよかったーと言って笑った。
「私は山南 敬助です。あなたの名前は何とおっしゃるのですか?」
「あたしは市瀬・・・・爽・・。あの・・、あなた達は新選組の山南さんと土方さん
でしょ?あたしも連れてって。」
俺は目を見開いて言葉を失った。山南さんもだろう。
「だが、・・・「知ってる!!」」
「新選組は女禁制だ・・って。女中としてでもいい!!連れてって。
見たでしょ?あの二人の目。怯えてた・・・。これ以上迷惑は掛けられない。
幸せになって欲しいの。あたしを救ってくれた人たちだから。
お願い!・・・お願いします。・・・連れてって・・下さい!!」
必死だった。俺だって、そこまで言われてゆるさねぇほど鬼じゃねぇ。
「わかった。連れてってやる。」
「本気ですか!?土方君!!この子を危険にさらすつもりですか!
女中だとしても、安全だとは言えない。わかっているでしょう!」
山南さんは爽を巻き込みたくなくて怪我をしているのに大声を上げた。
「っ・・・それぁ「心配は無用よ。あたしは地獄のどん底まで落ちた事のある人間なの。危険を一人で切り抜ける力は付いてるし、自分の身は自分で守る。お願い。」」
山南さんは顔をゆがめたが、本人がそこまで言うのだ。
承諾せざるをえない。
「わかりました。・・・・・・。」

その後、俺と山南さんは爽を連れて京都へ。

彼らとの出会い(2)

新選組に着いてから、あたしは最初に沖田総司と斉藤一に会って、挨拶。
「よろしくね。総司、一。あたし、トシの小姓になったから。」
そして、トシが隣りに居る状態であたしは二人に勝負を仕掛けた。
「ねぇ、あなた達強いでしょ!!これから、ちょっと真剣でやらない?」
「ふざけんな!爽!!」
「え~。良いじゃないですかぁ土方さん。僕もやりたいなぁ。」
総司も乗り気だ。一も目をキラキラ輝かせていた。
「俺も、試合を申し込みたいのですが。」
「ダメだ。」
「トシの意地悪。もういいし!!勝手にやるもん!!!」
あたしは一と総司の手を取って走り出した。二人に案内して貰いながら道場に駆け込んだ。


道場にいきなり女が入ってきたと思ったら打ち合いかぁ。しかも総司と一君相手に?
「おいおい、あの女大丈夫か?あんなにほそっこくておれちまうぞ。」
左之さんもそう思ってる。でも、どうなんだろ。実はすっげぇ強かったりして。
「確かにほっせぇ女だけどよ、あの総司と斉藤があんなに燃えてるぜ。二人でいこうとしてやがる。」
・・・ホントだ。新八ッつぁんの言うとおりだ。
すると竹刀を二本持った女が二人の方にむかってった。速すぎて見えなかった。何がなんだかわかんなくってさ。
一君も総司も苦戦してるみたいだ。総司も三段突きを入れたけど全部よけられたし。
「総司、そこ空いてるよ。」
そう言うと、女はあっさり腹部に強く突きを入れて吹き飛ばす。・・・総司がやられた。
後は、一君か。一君はタイミングを見て得意の居合いを繰り出した・・んだけど、それは完全によけられて、
居合いで空いた胴を討たれてしまった。 ・・・・・すごい。
「はははっっ・・すごいなぁ!僕と一君相手に勝っちゃうなんてさ。」
「でも、三段突きと居合いはすごかった!刀だったら風で斬れてたかも知れないわね。」
「何故あんたはそこまで強い?」
いや、そりゃ稽古だろ。
「う~ん。強くならなきゃ生きられないもの。全ては生きるため。」
生きる・・・ため?女だし、周りの男が守ってくれんじゃねぇの?

まぁ、暗いことはやめときてぇし!!!
「なあ、お前すっげぇのな!!俺は藤堂平助ってんだ。」
「市瀬爽!ヨロシクね!!今日から新選組でトシの小姓やるの。
ホントは嫌で、隊士の方が良いわって言ったんだけど、あたし女だし、心配みたいね。」
こうして話してみれば、すげぇ可愛い女の子じゃん。
「俺は原田左之助。よろしくな、爽。」
「俺様は永倉新八!!俺とも勝負してくれよ。」
「うん!!よろしく!!」
その時、道場に鬼が入ってきた。
「おらぁ!!斉藤!総司!爽!!」
「トシだー。おつかれねぇー。ちょうど終わったし、滑り止めしといて良かったわ。」
爽はどうやら、6番組組長 井上源三郎さんに土方さんの足止めをお願いしていたらしい。源さんは最年長なうえに怒らせると怖いから土方さんも手間取ったんだな。頭も回るし、つえーし、明るくて元気で、なんか不思議だな。
「じゃ、近藤さん所に挨拶いってくるからこれをトシにあげるね。」
爽は土方さんに二本の竹刀を渡して走っていった。
土方さんは盛大なため息をついて竹刀を片付けた。
「土方さん、すっかりやられてんな。あいつ、土方さんとは長いつき合いなんだろうなぁ・・・」
左之さんは苦笑いをしていった。それは俺も思っていた。
だけど、以外にも土方さんは首を横に振った。
「今日が会って三日目だ・・・。ちっ・・・恩知らずめ。・・ったく・・・はぁ。」
土方さんはフラフラとここを去った
「ありゃあ、重傷だなぁ。土方さん身体もつか?」
新さんが心配しているところ、総司は笑い出した。
「良いんじゃない?たまには見下される側になってもさ。」
総司は相変わらず土方さんに厳しいのな。
だけど、これからが楽しくなりそうだぜ。


あたしは走って局長の部屋にたどり着こうと頑張ってたんだけど、素晴らしく
迷っちゃったみたいね。さて、どうしたものかしら。誰か居ないかなぁ・・・。
あたしがきょろきょろとしていると上のほうから、何かしらの気配を感じたの。
(・・・天井裏か・・・。)
「ねぇ、気配、まっっったくかくしきれてないんだけど・・・
すると、焦ったのかドタッと物音がした。
(かわいいねぇ・・・。)
「・・・お願いだから、出てきてくれる?落ち着かないの。」
あたしが迷惑しているとおもったのか、けっこうあっさりと出てきてくれた。
どこかで見たことのあるような・・・・気がする?・・・・・
「「あ・・・・丞?/爽さん?」」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
やっぱり。丞だ。
「なんだぁ?山崎。もうばれちまったのか。」
でた。トシ。ちょっと厄介なのよね。
「申し訳ありません。副長。」
「っていうかさ、丞って隊士だったのね。あえて良かった。いきなり居なくなっちゃったんだから。」
トシは意味が分からないとでもいいたそう・・。
「申し訳ない。文でも出そうと思ったのだが・・・」
「いいのよ。無事で、こうやって会えたんだもん。それで充分。・・・それに、これからは一緒
とにかく、嬉しかった。昔突然姿を消した、大好きな人がいきててくれたんだもん。
トシは、ずっと黙ってポカーンとしてた。
「おい、おめぇら、・・・まさか、恋仲か?」
さぁ、聞いてくれましたね!
「「だんじて、違います。」」
おぉ!!丞と声が揃っちゃったわ。そうなのよね。全然違う!
(あはは・・・トシのザマァ。ククク
「ということだから、局長の部屋に案内してくれる?」
「分かった。俺が案内しよう。こっちだ。」
丞が歩き出して、あたしも素直について行った。後ろからはトシも付いてくる。
丞が近くに居ると、すっごく安心した。昔みたいに隣にいて、ときどきあたしに顔を向けて優しく微笑んでくれる。それが、暖かくてつい、甘えてしまいたくなる。でも、甘えたらダメなことはわかってるから、グッとこらえるしかない。誰かに寄っかかってしまったら、もっと弱くなっちゃう。それに、その人を不幸にする。
だって、あたしは・・・・・・・・・・・・・・・・
                        人じゃないから。          鬼だから

彼らとの出会い(3)

その時、ちょうど俺は部屋で書類をまとめていた。
いつもトシが頑張っているのでな。俺も頑張らねばと思っていたのだ。
そしたら、トシのデカイ声と、元気な女子の声がしてなぁ。雪村君の声でもなく、もう少し大人びていたなぁ。
・・・もしや、とうとうトシが恋仲の女子を連れてきてしまったか!!!!
焦って、勢いよく襖をあけた。
「トシ!!!お前はとうとう気をおかしくしたか!!恋仲だからといって男所帯の屯所に女子を連れてくるなど、
いかん!!いかんぞ!!副長のお前が乱れては新選組はおしまいだ!目を覚ませ、トシ!!戻ってこいトーシ!!」
俺は、早とちりをしてしまってなぁ。トシの肩をつかんでは強くガクガクとゆすり、何度も呼びかけた。
「こっっ・・・近藤さん!!誤解だ! 早まるな!!」
トシがそう言って、俺は説明を聞いてからあの報告の文のことを思い出して、驚いたなぁ。
彼女の事情は知らされていたから、もっと落ちこんで暗い子かと思っていたんだが、どうも明るい子でなぁ。
ずいぶんと好感が持てた。
その後、山崎君も一緒にみんなで俺の部屋に入って、少し話をしたんだ。
「いやぁ、・・・すっかり取り乱してしまってすまなかったなぁ。どうやら勘違いをしてしまっていたみたいだ。」
このときは、苦笑いをして謝ることしかできなかったなぁ。
トシも疲れたようにため息をついているし。
そんな空気を変えたのは彼女だ。
「いいえ、大丈夫よ。勘違いなんてよくある事だわ。・・あぁ、そうそう!あなたは局長の近藤勇さんよね。
あたしは、トシの小姓になった市瀬爽よ。これからお世話になるわ。」
彼女の目と言葉は迷うこともなく真っ直ぐで気に入ってしまったよ。だが、・・・
「トシ、お前の小姓は雪村君ではないのか?」
「・・・こ・・こいつぁ、正式な小姓だ。千鶴は総司の小姓にでもする。」
不思議でたまらんかったな。雪村君の時はあんなにも嫌がって、小姓の仕事もあたえないのに、彼女は、
自分の小姓だと言い張っている。
よっぽどそばに置いておきたいのか。トシは。
「そうか。雪村君もトシのそばなら安心だと思ったのだがなぁ。」
「すまねぇな。近藤さん。」
「・・・あたしがなっちゃっていいの?その子に悪くないかしら?」
彼女には、思いやりの心も持っているのだな。
なんて、純粋で良い子なのだろうか。本当に、血生臭い新選組に置いても良いのだろうか。
「気にするこたぁ、ねぇよ。あいつぁ俺におびえてやがるからな。逆にその方がいいんだよ。」
確かに、あの子はトシに怯えてるかもしれんな。
まぁ、トシはいつも憎まれ役を買って出てくれているから仕様のないことなのかもしれん。
本当は、優しくいい男なのだが。
「・・・そう・・・。もったいないわね。トシはこんなに優しいのに。鬼副長なんて言われてるけど、
ほんとはすごく温かい人なのに。どうして、恐がる人が多いのかしら。」
彼女は、本当のトシに気づいていた。なんだか、それが自分のことのように嬉しくなったよ。
「・・・ったく。知ったようなこと吐くんじゃねぇよ///」
そう言って、彼女の頭を少し力ずくに撫でるトシとそれを嬉しそうに受け入れる彼女のやりとりが、何ともほほえましかった。彼女だったら、トシの小姓にふさわしいだろう。しっかりと支えてくれるさ。




あたし達は近藤さんの部屋を出て、とにかくトシの後に付いていった。
「結局、丞は最後まで近藤さんに何も言われなかったわね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
無言。結構本人は傷ついてたりして。
「ねぇ、トシ、そう言えばあたしの部屋は?」
「残念だが、部屋は一つも空いてねぇ。これからは俺の部屋で寝てもらう。」
その瞬間に丞はピクッと反応した。
心配してくれてるのね。でも大丈夫!!
「じゃあ、屋根で寝る。」
「バカ!落ちるだろうが!!」
「屋根ではもう寝慣れてるから大丈夫よ。それに、トシの隣のほうが危険だわ。」
トシはため息をついた。・・・あ、認めた。
「屋根がダメっていうなら、丞の部屋で寝るから。」
あたしからの突然のふりに丞は驚いて顔を赤く染めた。
「・・・っ俺の部屋はだめだ。」
丞ってこういうところ可愛いのよね。よし。遊んじゃお。
「ねぇ、どうして?良いでしょ?一緒にお風呂入った仲じゃない
丞はもっと顔を赤くした。
「っっっっっっ!!!そっ・・それは幼少期の話だ。今とは違う!」
「もうっ、恥ずかしがること無いのに。」
だって、久しぶりに会ったんだよ。添い寝ぐらい許してよ。いっぱい話だってしたいし、
今まで、寂しかったんだから。
「・・・・・もういいわ。丞にはあたしが寂しかった事なんてわからないでしょ。突然いなくなって、
心配で、味わったことが無いぐらい寂しかった。丞にはわからないよ。・・・っ!」
あたしは、その場に居られなくて、走り出した。とにかく、一人になれる場所を目指した。




彼らとの出会い(4)

あたしは、何をしてんだろ。まったく。そろそろ、短気なのも直さないと。
今まで溜まってたものがするりとこぼれ落ちて、丞に酷いこと言った。丞はちゃんと分かってくれてるって
知ってるのに。
あたしは、トボトボと庭を歩いてた。とうとう暗くなってきて、あたしはいつの間にか屯所の外へと足を運んだ。
後先かまわず歩いていたから、ここがどこかもわからなくて、ふと足を止めた。
すると、目の前にあざやかで美しい光景があった。
「きれい・・・・・。」
思わずつぶやいた。
目の前に広がるのは一面の桜。夜の暗闇に薄紅の桜は映えていた。
一番大きな木に登って上からの景色を堪能した。
木の幹に頬を寄せて目を閉じた。・・・気持ちいい・・かも。ずっとここにいるのも悪くないわね。
そうしていると、ぶわっと風が吹き、思わず目を細めた。
目を開くと、目の前には不思議な雰囲気を持った男の人が立っていた。目を静かに伏せているその人の顔は
誰もが見とれてしまうほど美しかった。髪は見たことのない金色で桜が放つ光によってキラキラと輝いた。
ゆっくりと目を開けた彼は、あたしに目を向けた。
彼の目は、透き通るような優しい光を宿した赤色。見たことが無くて、つい見とれた。
「ほぅ、この場所を知っているとは珍しい。」
なんだか、私の中の何かが本能的に何かを察している。
「あたしに行く場所はないの。だから、ずっとここにいようかなって思っていた所よ。ここはたまたま見つけただけ。」
あたしは高い木の上から飛び降りて静かに着地した。
「何故行く場所がない?お前のような美しい女であれば、奪おうとする男はいくらでもいるだろう。」
あたしは首を横に振った。
「寄ってくるのはたくさんいるけど、本当のあたしを見たとたん、怯えて逃げ出す。今も、昔も同じ。・・・・・
人間って変わらないのね。自分たちと違う者だと分かれば、とっさに仲間を連れてあたし達に斬りかかる。」
「人間とは、弱い生き物だ。欲望にかられ、同じもの同士群れをなして行動する。一人ではなにもできん。
我ら鬼とは違い、脆く、儚い生き物だ。」
・・・我ら、・・・鬼。やっぱり、そうだったの。
人間の命は脆い。だからこそ、彼らの人生は鮮やかで明るい光を宿す。
・・・ホタルみたい。
「ねぇ、あなたの名前は?・・・あたしは、市瀬爽。」
「風間千景だ。・・お前の心と瞳は美しい。気に入った。・・近いうちにまたお前に会いに行く。」
美しい・・・か。はじめて、そんなこと言われた。
「そうね。また近いうちに。あたしも、ちーちゃんのこと気に入った。あなたの目、とってもキレイ。
あたし好きだわ。」
「ちーちゃん・・・・だと?」
「うん! 可愛いでしょ?ちーちゃん。それにしても、あなたの目、とってもキレイ。あたし好きだわ。」
すると、ちーちゃんは面白そうに目を細めて笑った。
「それは、愛の告白と取って良いのか?」
「なわけ、ないでしょ!・・・でも、あなたに会えて良かった。あたし、同胞とは会った記憶がなかったから。
スッキリしたわ。ありがと。・・・そろそろ、戻る。」
あたしはちーちゃんの頬に軽く口付けた。ちーちゃんは驚いた顔をしていたけど、なんだか満足していたみたい。
歩き出したあたしの手をちーちゃんはつかんだ。
「待て。おくってってやる。どこだ?」
「・・・新選組。今は、そこでお世話になってるの。」
ちーちゃんは黙って顔をゆがめた。
「お前は羅刹を見たのか?」
「・・・・・羅刹?それは何?」
帰り道、羅刹について聞いた。
新選組の機密事項。 羅刹。
変若水という薬を飲み、鬼のように治癒力と戦闘能力が普通の人間より高くなるが、狂ったように血を欲するという。その容姿は、白髪に赤い瞳。
「奴等は、血を口にするほど狂い、力を使い果たすと灰となる。羅刹は、人間と鬼の間という半端な存在だ。
あいつらは、普通の人間よりは脆くはないが、所詮はまがいもの。我らにはとうていおよばん。」
初めて知った新選組の秘密。あたしが知っているとばれれば、あたしはきっと、殺される。
「ありがと。話してくれて。あたしも、危険を避けることができるわ。」
話していると、あっという間についてしまった。
あたしは、差していた簪を取って、彼に差し出した。
「これをあなたに預けるわ。あたしの家で受け継がれてきたものなの。また、会えるように。」
「わかった。預かろう。」
そのやりとりを見ていた幹部が居た。
「爽!・・・・・お前は?」
左之・・・?
「爽に近づくな。」
「きけぬな。俺の心は爽に移った。また、来る。・・・爽に傷を付ける事があれば、この俺がゆるさん。」
ちーちゃんは、あたしに優しくほほえみかけて、暗闇に姿を消した。
また、すぐに会えるよね。


「おい、爽、お前大丈夫か?」
「?・・・大丈夫よ?左之は何でちーちゃんに怒ってたの?あんなに敵意を向けることなんて無いのに。
あたしは話聞いてもらって、送ってもらっただけだし。それに、ちーちゃんは優しい。」
そういうあたしに、左之は信じられないと言うように目を見開いた。
「・・・・(ち・・ちーちゃん??)・・まぁ、今日はいい。早く寝ろ。」
「・・・あたし、寝る部屋がないの。トシの隣で寝ろって言われたんだけど危険でしょ?それに、丞にも
だめって・・言われちゃったし。・・・ねぇ、左之と一緒に寝ちゃダメ?」
左之は呆れたようにため息をついた。
「そういうこと言うんじゃねぇよ。襲ってくれって言ってるようなもんだ。・・・まぁ、いいぜ。俺の部屋で
寝ても。俺に襲われても文句言うなよ。」
左之はそんなこと言ってるけど、わかる。左之は、そんな簡単に襲うなんて事はしない。
女の子が傷つくようなことはしないもの。
「俺の部屋はこっちだ。布団もちゃんともう一組あるから安心しろよ。」
左之は笑いながら言った。